ただしハードなロッククライミングや冬山ではなく、軽登山である。とはいえ未舗装の山道を辿りピークを目指すという行為は、安全安心が行き届いた現代社会において、冒険の香りを残す数少ない遊びであった。すぐに夢中になり、休日には秩父、奥多摩、丹沢の低山に足繁く通った。今から30年ほど前、1995年のことである。
調べると、1995年というのはちょうどカシオからPRO TREK(以下プロトレック)が誕生した年であった。思い起こせば確かにその頃から、プロトレックを愛用する山好きが増えていったように思う。

週末、登山口に向かう路線バスは登山者で満員になる。手すりや吊り革に捕まるその手元を見れば、アウトドア時計のトレンドがなんとなく分かるのだ。私の山仲間のなかにも、プロトレックを購入する者が何人かいた。実際プロトレックの初号機である「DPX-500」は、高度や方位が分かる画期的な腕時計として、当時の多くの登山愛好家に受け入れられたという。
以来プロトレックは30年以上にわたり技術革新を続け、現在では日本のアウトドアウォッチを代表する存在として、広い認知と厚い支持を得るにいたっている。
数あるプロトレックのラインナップのなかから今回レビューするのは、クライマーラインの「PRW-69YB-3JF」。多機能表示を実現するデュプレックスLCD(二層液晶)を搭載した大型のデジタルフェイスと、質実剛健な角型フォルムが特徴的なモデルだ。
実際に装着してみると、まずその軽さに驚かされる。重量は68g。軽さの理由はケースおよびケースバックの素材にある。調理の火や焚き火に強く、環境負荷を低減する難燃バイオマスプラスチックを使用。アウトドアマンが求める実用性を確保し、そのマインドにも合致する素材と言えよう。
この「PRW-69YB-3JF」はアウトドアでの使用が本筋ではあるが、街での着用にも十分なポテンシャルを発揮してくれる時計だ。
アウトドアの気分を盛り上げる黒×オリーブグリーンのカラーリングは、いまどきのカジュアルな服装にもマッチする。
無駄を排したフォルムと68gという軽さは、荷物の軽量化を追求するクライマーにはもちろん、着けていて疲れない時計を志向するウォッチファンにもおすすめできる。
コンパス表示、気圧/温度表示、高度表示はまさにクライマーのための機能だが、日々の散歩や街歩きの際に使っても当然便利であるし、“ツールをいじる感覚”というのは無邪気に楽しいものだ。
山と街をクロスオーバーして楽しめるプロトレックの「PRW-69YB-3JF」。クライマーやハイカー、キャンパーにはもちろん、アウトドアライクなギアや服が好きな方にも、ぜひ一度試してほしい時計である。おそらく、きっと、いや間違いなく、気に入ってもらえると思う。