ロレックス「GMTマスター Ⅱ」の”レフティー”はおそらく世界初である、“ガチ”の左利き専用モデル
オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ
ウォッチズ&ワンダーズ2022に参加したロレックス。初のオフライン参加にも関わらず、新製品は一見地味だった。中でも意味不明に思えたのが、「オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ」の左リュウズモデルである。ムーブメントを反転させて、リュウズを左に置いた本作はロレックスのラインナップの中では唐突すぎて、どう考えても理解に苦しむ。あるメーカーのお偉いさんが「ロレックスは売れすぎているから、あえて地味なモデルで話題を避けたのだろう」と述べたのも納得だ。
しかし、この“レフティー”、つまり左利き専用モデル(※編集注 ロレックスでは同作を厳密にレフティーモデルと明言していないが、便宜上、記事内ではそう記載する)には驚くべきポイントがあった。なんと、ムーブメントの向きを180度変えたにも関わらず、既存のGMTマスター Ⅱと精度は同じ±2秒以内、なのである。普通のモデルとレフティーの精度が同じ、というのは時計業界ではあり得ない。
オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ
ロレックス「オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ」
Ref.126720VTNR。傑作GMTマスターIIに加わったいわゆるレフティー。単なるデザインではなく、左利きの人が着ける(=右手に着用する)ことを真剣に突き詰めたモデルだ。自動巻き(Cal.3285)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径40mm)。100m防水。122万4300円。
普通の機械式時計は、右腕に着けると精度が狂うが……
機械式のムーブメントには必ず「姿勢差誤差」が存在する。これは時計の向きが変わるとムーブメントの精度が変わることを指すもの。そのため各社は、右利きの人が腕時計を左腕に巻いた際に、一番精度が出るセッティングにしている。
つまり普通の機械式時計を右腕に着けても、期待通りの精度は出ないというわけだ。ましてや、ムーブメントの向きを180度変えたいわゆる「レフティー」の精度が、レギュラーモデルより劣るのは当然だった。その常識に挑んだのが、新しいオイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱというわけだ。
オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ
ロレックスの関係者はこう語る。「弊社では、時計の装着に関してさまざまな知見を重ねてきた。本作はその現れである。このモデルは、ムーブメントをひっくり返して、日付表示や文字盤を変えただけではない。ムーブメントの向きを反転させても、既存のモデルと精度が同じなのだ。私たちは、このモデルの精度チェックを、時計を右腕に装着した状態で行った」。関係者曰く「精度は既存のGMTマスター に同じく、±2秒以内」とのこと。
参考記事:https://www.rasupakopi.com/rolex_z68.html
同社が、GMTマスター Ⅱの精度調整を、レフティー専用にしているかは不明だが、少なくとも本作は、世界で初めての左利き専用モデルと言ってよいのではないか。ではなぜ、初のレフティーにGMTマスター Ⅱを選んだのか。ロレックスは理由を明かさないが、使い勝手を考えると、このモデルがベースになったのは分かる気がする。スポーツモデルに新しい試みを盛り込むのは難しそうだし、レギュラーモデルでは、何をベースにすべきか迷いそうだ。